金澤詩人 NO12
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9 この身体がなければ 楽しいことも嬉しいことも 体験できないのです それを忘れて プラスチックのように扱われて 身体はどんな思いで 一日一日を生きたのでしょうか あたたかくやわらかいのに つめたくかたく扱われ 存在を大切にされず 当たり前に動くものとされていました どんなに痛く、苦しかったでしょう この身体は ただのプラスチックの入れ物ではないのです あたたかくやわらかい身体に やさしくうつくしい いのちがはいっているのです プラスチックのように扱われて つめたくかたく扱われても この身体は 腕を伸ばし、足を動かし 生きることを教えてくれる 愛おしくなって まるごと抱きしめた あたたかくてやわらかくて 生きているのだと思えた 新しくなるとき 新しくなるとき たくさん捨てる 面影とか 抜け殻とか 詰め込んだ気持ちとか 新しくなるとき たくさん食べる 景色とか 言葉とか 他人からの気持ちとか 新しくなるとき たくさん眠る きっとこの先 忙しくなってしまうから 新しくなるとき 抱え込んできた気持ちを 懐かしく思う 思うけれど

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