金澤詩人 NO12
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68 おおきな寺にとついだが じぶんの兄さんがしんだので りえんさせられ 寺にひきもどされ 婿をとり わたしの父をうんだ ひきもどされた理由は けっとうをたやさないため 曾祖母のことがわかったのは 一つうの手紙 そこにしたためられたのは 峠の子孫からのといあわせ わたしはそれにおうじ 面会した 会って即座に わたしはそれをしんじた 祖母のいとこのかおとそっくりだった 曾祖母の孫にあたる老人は きょういくしゃだった しんけんなかおで わたしのはなしをまった ワタシハアナタノオハナシヲシンジマス アナタノオカオト祖母ノイトコノカオガソックリダカラデス といったら しんそこあんどしたおももちでかえっていった そのひとにもしょうこがあったわけではない しょうこはやみにけされ いいつたえしかのこっていなかった わたしはこの峠をこえるのがすきだ 冬の木々はこわく 曾祖母のかなしみや ぎせいになったひとたちのくるしみがあらわれているようで こわいけれど ふかいものがたりがせまってきて 峠の途中には おおきないけがあり 白鷺がとび さかさふじのようにゆきをかむったしろいもりがいけにうつっている ふもとのむらは 白壁の土蔵があって 宿場町のおもかげをのこしている なん十年たった あのひとはもうなくなったかもしれない その子孫にあいたい でもいつも迂闊なわたしは なまえもわすれ手紙もなくしてしまった わたしのおもいだけがある
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