金澤詩人 NO12
65/70

65 先日、婦人科医に言われた。
 渡されたパンフレットに書かれた「ストレスを溜めずに、適度な運動を。」「頑張りすぎず、適度な休息を。」 当分、縁がないと思ってた… 
いや、分かってた。分かってた。だけど、今更言われたって、分か りゃあしない。 ドクター、なにすりゃいいの?安静?安静ってなに? 
「ツライ」って、言ってしまいたい。 いまさら尊い素直な剥き出しの心が懐かしい。 だけど、よく笑うようになったよ。 大人になって、よく笑うようになった。 "みんなが笑うから、私も笑わなきゃ" 本当に、本当に、クダラナイ。 偽りのあれこれが、私を汚して臆病になった。泣けてきて初めて 気付く… 我慢してたと気付く… 「ツライ…」 急に、泣けてきて、嗚咽が止まらなくなる。
 ひとしきり泣いて、丸めたティッシュが散乱する床を、呆然と見つめた。 心は、動いてる… だけどなんだか、いつも不安定なんだ… 嘘を吐いては、恥ずかしくなって、 重ねる化粧が厚くなって… 厚くなって、初めて厚化粧になってる自分に気付く… 『大人になって、恥を隠していたことを。』 なんて、急に溢れる隠れてた無意識な感情たちに戸惑う。 どこに隠れていたのだろう… こんなの私じゃないよ。三十歳になっても、大人になれない私が、私らしいはずなのにな。 またもや隠したくなり厚化粧になって、笑われる。笑われる厚化粧が、また悪循環なんだ。 
「ごめん、一人になりたい」 主人に送るメールに、罪悪感を感じる。 子宮が痛い。

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る