金澤詩人 NO12
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64 蛭間慶美 都会の勝者 私が求めるものは、私が知らない刺激だけ 密かに探す真珠の淡い光沢の様な優しさ 瞬きした間に変わる新しさ 振り返る世界がすでに古い 見上げた空は狭くて 小さな星さえ遠く それさえ 都会を広く見せる飾り 歩き始めた ハイヒールはゴールド 揺れる ピアスが振り撒く輝きはシルバー 暗闇に似合う 唇は真新しいレッド 狙う獣たちの目は妖しいブラック ワガママな女だけが持つパスポート スタイリッシュな心を持った者だけが 手にしている 都会のゲームが始まり 悪い男と女が群がる 秘めた恋心を盗んだ者が勝ち 嫉妬心に怯えた者が負け あの女が愛した男が私をホテルに誘い あの女が狙った男が白いシーツと私に溺れ あの女が抱いた男が私を抱いた "奪った"なんて人聞きの悪い事は言わないで 舌打ちと同時にジッポの蓋が鳴る 隠しきれない笑みがガラス窓に映る さっきまでの夜景が朝焼けを連れてきた 尖った私が溶けてゆく 眩しさに細めた目には優しさが戻り 煙草を近付けた口元には幼さが戻る 髪を掻き分け、眠る男の頬にキスをする "これが、勝者のやり方よ" 揺れる煙がなんだか綺麗… 月経前症候群(PMS)
 顎に大きなデキモノできて、 胸焼けに渋る痛さのお腹に顔を歪めた。 体が震えて、手足が冷たい。 凍える様な寒さが、ますます私を病ませる。 なんでもないのに、苛立つ… 
「月経前症候群ですね。」

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