金澤詩人 NO12
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63 かわいらしいものをあげたい 例えば ふわふわとしたもの 夕暮れ時の駅で 冷えた空が大きすぎてめまいがしてはいないか とても心配なのです こんなのっておかしいよね 電車に乗って会いにいきたい (助け出してあげたい) ずいぶんと昔を思い出す あの人 いつも忙しそうで疲れてた 私にできることはなかった 想いばかりで 前に進むしかなかった いろいろあって 現時点 できることがふえた 友達もふえたし シミもふえた あの人にまた会えた 忙しそうで疲れていた 私にできることはなかった せめてお土産を持って行けばよかった 自分の稼ぎで買えるようになったから なんで泣いているのか 人の苦しみなんてわかるもんか 人の悲しみなんて理解できるもんか 私の悲しみなんて理解されてたまるもんか おかしいよね 寝転がって なんで泣いているのか 妄想することは尊い 良い妄想も悪い妄想も尊い だけど本当はわからない おまえの妄想はわからない 私のものしかわからない おまえを肴に妄想する私はひどいやつだ きもちわるいやつだ あの瞬間 私は叫ぶことができなかった 机 椅子 人 人 人 ドア 廊下 わからなかった いろんなことがわからなくなっていた 誰もがそんな経験をして前に進めばいいのに 助けてほしくなって 助けて って言ってみて ただ少し呻いて 前に進むしかないのかと 泣いていたらいいんだ
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