金澤詩人 NO12
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38 うしなった友と 家族と しんぱいを火山に残して 5 過去は群青未来は孔雀の 傷つき疲れた海が 汚れた襞で きえない傷あとを洗っている 忍冬や ゆきのしたの花を 山に咲かせるのが免罪符なら その色は 恩赦のしるしなのか 低い屋根のつらなる平野で 虹は海にむかって走り 雲にはいって消えるまでに いのりをたむける 船で潮のわかれめをゆくように 過去と未来の色はちがっている この船は 不思議なふねだ 群青色に遡る過去と 明るいあおへと 進む未来を 漕ぎわける 過去は群青色をしている 未来は孔雀の 尾羽のあかるいあおだ ゆっくり けれどもたしかに 船は 沖へむかおうと ふたつを漕ぎわけ進んでいる 接骨木の花は 今年も あの 小径の ぬかるみのところで 咲いているだろうか

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