金澤詩人 NO12
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37 青いつばさをみせて 鳴きかわす 竜宮洞穴への道は みえない無上嶽に まっすぐにつづいている あの まっしろいいただきへ 堂々たるこの緑が 登っていくにつれて 松となり 桜ともみじになり しらびそ になり おおしらびそ になり 米つがと だけかんば になる 3 世界でもっとも洞窟の ともだちも犬も 生きてたころ あの火山が おさないこどもらを育てた その姿は胸のなかにしまってある こうごうしい頂にまた あがることは ないにしても こどもたちが わたしと 偉容をめにおさめ みあげてくらしていた 世界でもっとも洞窟の おおい火山は 活きてその底にマグマをたぎらせている 4 にわとこの白い花は 接骨木の しろい花は こみちを しばらくいったところに 咲いていた 刹ノ海神社の 参道ぞいの 低いうらじろもみの間に 一本 あれは 雨上がりに きまってぬかるむ地面のところだ ともだちも 犬も生きてたころ 森は幼い子らの 遊び場だった 海辺にきて 春 蛍烏賊は 水をはきだし光った 初夏 蜃気楼の海は 空に群青で一筆かいた いま 蛍が今年の光を 静かにともしている ひたぶるに わたしをあきらめよくさせる 季節が 緑の瞳を いっぱいにみひらいて まぶしく海をゆびさしている
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