金澤詩人 NO12
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36 つぎに見られるのは 六十八年さきになる 超満月を 明日連れてこよう というように笑みをうかべた 竜宮 1.縄目の熔岩のうえで 接骨木(にわとこ)の 白いはなが あのこみちを しばらくいったところに 今年もさく 刹ノ海神社の 入り口にむかう ちいさなうらじろもみの 列のあいだにただひとつ 雨上がりに きまってぬかるむ 地面のところだ 森は 四方から響いてくる 山の若葉の嬌声にも もだして思索にふけっている 雲が切れて 青い空から 木間を縫って おちてくる光が 苔むした 縄目の 熔岩のうえをくすぐる 発見されることのない 瞑界の入り口のような洞窟を いくつとなくふところに しのばせたまま けだかい森は 口もとをほころばせる かんむりとなって ゆれるこずえが 宝玉のしずくをまきちらす ごじゅうからと りすが 枝をかけぬけ 洞では梟がねずみを とらえる夢をみている 深くうがたれたあなのおくで 煌めく赤い瞳の蛇が いきをしている 2 あのまっしろい頂へ ごごになると 火山をとりかこむ 雲のささやきも くぐもって みずうみには 十二ヶ岳が 鍵掛峠が だんどこ山が いたるところ白い花を 精液みたいにふりこぼし 山鏡となって映りこむ おおるりが
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