金澤詩人 NO12
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35 犬は犬であって犬として 人が人でない一日がある 過去と未来と隷属と支配 世界が羅針盤を欲する夜 サンドイッチのための十四行詩 サンドイッチ サンドイッチ 本に似ていて ほんに うまい 作っておもしろいサンドイッチ 紅茶で煮たチキン レタス 庭で摘んだバジル トマトにきゅうり こしょうとマスタード 願いをこめて なかみをこしらえる 文字のかかれた 頁みたいな白や黒 潜水艦型のパン そろえて開いて はさんでとじる のせて かさねて ねかせて 切る 土地にあわせた 歴史と伝統 かざりとなかみ 栄養たっぷり 食べられる 本だ そら ならべて かざる サンドイッチ 世界を かける サンドイッチ 産業からIT革命 ケンジントン宮からマックまで はたらくわれらに 貴族 賭博者 政治家 労働者 老若男女 犬に乞食に サンドイッチ 陽の傾くまえに 白い船が沖をゆく 窓に陽の傾くまえに 今日をつかまえる その手で ギタリストは ほほえみ 音色で 記録する かもめの羽根よりもかるく 動く 手で 空の青を とどめるという 絶望的な願いをいだき 果たせなかった わたくしの まえで あやとり が とけ かもめの ゆりかごになって 白浪のむこうへ ほろほろと ながれつたって 東から西へと かえりゆく かりがねの群れを とらえて 空へ 放ち 引きおこす 弾きおこす 弓と弦になって 射ると あたって 太陽 まっすぐ 海に落ちた 弾き手は キャスケットをかぶりなおすと

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