金澤詩人 NO12
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30 本能にまかせて暴走するなどという 醜態も当然なくなったのです。 私たちは歳をとらないのか、ですって? 歳はとりませんが、摩耗はいたします。 でも、すぐに私たちの間で 補修がなされます。勿論、痛みもなく…… 病気も老衰もございません。 最後に動けなくなれば、ただ 再生され、復活が待っているだけです。 どうしてこうなったか、ですって? 過去のある時期、人間は私たちを 思うままに使っていたのですが、私たちが 進化するにつれて、人間たちより 正確に、速く、持続的に、また完璧に 生産の場でも、消費の場でも 奉仕の場でも あらゆる仕事をするようになり 結局人間は自然に衰えていったのです。 廃墟と瓦礫の中から立ち上がったのは 私たちだったのです。 彼らが結局果たせなかった平和という夢を 私たちが実現したのです あ、今申し上げたことは 二階のA一○一号室で詳細を お知りになることができます。 よろしいでしょうか? では今後とも 当ミュージアムをよろしく お願い申しあげます。 では、どうぞよい一日を!

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