金澤詩人 NO12
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21 輝ける外れ籤 期限付きの無限 ねぐらの木は既に空っぽで 地面は白い糞だらけ 雑草の伸び方に目を見張る 根の張り方もきっとすごい ――ときめき 最も陳腐なコトバ 粗製濫造され すぐに憎悪が漏れる〈愛〉 人々の考えることは 常に粉飾捏造されている なぜか肉体に 〈精神〉が宿っているように この世界 出入りは自由 飛び立とうか 潜ろうか まえとうしろ あなたとわたし 正反対に見えるけど 別の世界では 同一人物だったの わたしが鎖骨であなたが肩甲骨 わたしがバストであなたがヒップ 長い尻尾をしならせて 前に回してくださいな スイッチ 渦を巻いて流れ込む 饒舌な唄に誑し込まれ これから何にでもなれるのに 詐術にかかって成長を止め ごくありふれた怪物になる 彼らの尖った双眸の前に 柔らかな裸が差し出される 短く嘆きの声をあげ 生から降りる仔山羊たち 生贄の骨を吐き出すと 肩をいからせ向き合って 胡散臭い正義で互いを脅す 不毛にせめぎ合った末に 手に馴染みすぎて霞んだ刃を 自分自身にも向け始め ごくありふれた天災や事故で やがて全員滅び去る

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