金澤詩人 NO12
13/70
13 治らないまま連れて行く 一緒に生きていくだけだ いろんなことがあったけれど それはそれでとてもよかった 知らない世界をたくさん見た 知らない痛みをたくさん感じた 長いこと雨が降っていて 晴れる見込みがなかったけれど そろそろお日さまが出そうだ わたしは窓を開けてみる いつの間にかやわらかくなり あたたかくなった風が吹く 久しぶりに開けた窓から 新しい気持ちをもらった お日さまが出て濡れた道路を やさしく照らしてあたためる ふさぎこんでいる場合ではない 新しい靴で歩こうか 痕になってしまった傷と 履き古した靴が宝物 こんなに自分が愛おしい ずいぶん幸せになったなあ
元のページ
../index.html#13